【宮城】がらんとした空間に、冬の日が差している。仙台市葛岡墓園(青葉区)の管理事務所の一室に、震災犠牲者のものとみられる遺骨が2柱、保管されている。
二つの骨箱に、それぞれ番号がついている。
「61―A―6」
「57―RC4」
以前はもっと小さなケースに入っていた。骨片で見つかった部分遺骨だ。だとしたら、DNA型鑑定による特定のハードルは高い。ひょっとしたら、ほかの部分はすでに身元が判明しているかもしれない。
参る人のいない祭壇の水とお茶は、墓園職員がこまめに換える。11日の月命日前後に欠かさず、市内の愚鈍(ぐどん)院の中村瑞貴(みずき)住職(62)が供養に来る。
震災直後、墓園そばの葛岡斎場に、次々と遺体が運ばれてきた。中村さんは仲間の僧侶と交代でひと月余り、悲嘆にくれる家族のそばで読経を続けた。だから最後の1柱まで、行く末を見届けるのが使命だと、思い定めているという。
宮城県内の自治体や寺が預かり続ける震災関連の身元不明遺骨は、2年前の聞き取り調査では約70柱。無機質な「番号」が「名前」に書き換えられるのを、今も待ち続けている。
誰かが迎えに来るのを、待ち続けている。(編集委員・石橋英昭)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル